大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)48号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二、本件審決が、本願発明の要旨を「約七〇〜八五%の範囲で」とすべきを「上部において約七〇〜八五%」とした点を除き原告主張のとおり認定したうえ、これを引用例と比較して、両者は、第一、第二酸化器内の温度範囲第一、第二酸化器を使用する点及びエチレン酸化の収率を高めようとする技術的思想において一致し、その収率にも大差が認められない旨説示したが、第一、第二酸化器における変換率については何ら言及するところがなかつたことは、当事者間に争いのないところである。しかして、右第一、第二酸化器における変換率が本願発明の構成要件の一であることは、当事者間に争いのない本願発明の要旨に徴し明らかなところであるから、本件審決は、この点に関する引用例との氏較について判断を示さなかつた点において、判断に影響を及ぼすべき事項についての判断遺脱ないし理由不備の違法があるものといわざるをえない。けだし、前記第一、第、二酸化器通過の際における変換率の点が原告主張のように、本願発明における技術的新知見であり(成立に争いのない甲第三号証によれば、引用例における変換率は、第一反応器においては三五〜五〇%、第二反応器においては五〇〜七〇%である)、その結果、原告主張のようなエチレンオキサイドの良収率(本願発明の収率が、実施例によれば、64.5〜67%であり、引用例のそれが五五〜六五%であることは、当事者間に争いがない)を挙げうるとすれば、直ちに本願発明をもつて、引用例から容易に実施しうる程度のものと断ずることはできないというべきだからである。

この点について、被告指定代理人は、「本願発明の要旨における変換率に関する記載は機能的又は目的的記載であり、本願発明の構成要素のうち変換率に影響を及ぼすものは温度条件のみであり、これが引用例と一致し、収率も大差がないので、他の条件もほとんど同じと考えられたので、変換率について触れなかつたものである」旨弁疏するが、このような主観的意図(もし、審決当時それが存在したと仮定しても)が、客観的な判断意思の表明としての審決において、この点に関する、当然示すべき判断を示さなかつた事実をいささかたりとも合理化しうべきものでないことは明々白々の事理であるから、被告の右主張は、もとより採用に値しない。

(むすび)

三、以上説示したとおりであるから、その主張の点に違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、結局、理由があるものということができる。よつて、これを認容する。(服部高顕 三宅正雄 石沢健)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!